日下古文書研究会会報『くさか史風』

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『くさか史風(しふう)』刊行のことば 浜田昭子

日下古文書研究会会報

『くさか史風(しふう)』刊行のことば

 

 日下古文書研究会が発足してすでに一六年になります。日下村の享保時代の庄屋森長右衛門貞靖が書き遺した『日下村森家庄屋日記』を読みたい一心で始まった活動でした。

『日下村森家庄屋日記』は享保十二年(一七二七)から十八年(一七三三)までを読み終え、翻刻と解説を刊行しています。その関連で地元の人々の要望もあり、『くさか村昔の暮らし』『善根寺町のあゆみ』の刊行にも繋がりました。

 その他にも河内の旧家の村方文書の調査と目録・史料集の刊行にも力を入れて、善根寺村庄屋向井家、今米村庄屋川中家、十津川村庄屋今西家の史料集を刊行しました。

何百年間も蔵の中で眠り続けた文書の埃を払い、張り付いた和紙を竹ヒゴではがしつつ、現われてくる墨文字の一つ一つから、当時の人々の生の声が聞こえます。何百年も前に生きた人間の実際の暮らし、そこにある歎きや、苦しみ、時には喜びが直に伝わってきます。歴史を大きく動かした英雄たちの事績だけが歴史ではなく、名もない普通の庶民の何気ない日々の暮らし、それこそが本当の歴史だという実感がありました。

近世も早い時期の元禄四年(一六九一)の善根寺村明細帳から、中世の暮らしの名残が垣間見えます。(45㌻)それを近世へと転換させたものが、大和川付替えという大事業でした。人々の暮らしが時代によって、そんなにすぐに変革するわけではなく、かつての暮らしを踏襲する長い時の流れの中で、古いものを捨て去り、新しい技術を獲得し、時代を紡いできたのだという実感がありました。

そこに、何よりも現在とは比べ物にならないくらい過酷な暮らしの中で、辛い労働や、悲惨な運命にめげることなく、自分たちの未来を明るいものにしていこうとするゆるぎない勇気が感じられます。それが確かにこの地に生きた先人たちのエネルギーとして、ひしひしと私たちの身内に入り込んでくるのです。そうして永々と築き上げられた歴史の上に、まぎれもなく今の私たちの暮らしがあります。

これまでの活動を通じて、様々な経験と知識を得ることが出来ました。会員も増え、それぞれに研鑽を重ねてきたその成果を、地域の皆様に還元していくことが出来たらという思いで、この冊子を発行することになりました。

 これまで私どもが活動を続けこられたその陰には、常に地域の皆様の大きなお力添えがありました。そのご恩にほんの少しお応えすることが出来るのであればこんなうれしいことはありません。

 

 

平成三十年五月二十日

               日下古文書研究会

                     浜田昭子

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